現場監督として覚えておきたい、近隣とのトラブル回避のコツ

現場監督と近隣トラブル

お施主様の家づくりを支える現場監督の仕事で避けて通れないのが、「ご近所との良好な関係を保つ」ことです。これをうまくやれるかどうかは、お施主様の大切な家の工事そのものの進展にも関わってきます。

工事現場でのトラブルというと、映画や小説などで描かれているような暴力団などとのゴタゴタを想像してしまう人もいるかもしれませんが、ここで紹介するのは、ごく普通の、現場の近隣で暮らしている方々との付き合い方ということです。

家の工事は数日で終わるものではなく、何か月もかけて行われるものです。近隣住人の人々と友好的な関係を保つことは、現場監督の重要な仕事のひとつなのです。

本記事では、近隣住民とトラブルを起こさないようにするためのコツを紹介します。

大切な「事前のお知らせ」を怠らない

まず、工事が始まる前に、近隣住人の方に前もって通知や挨拶をしているかどうかで、相手の反応は大きく異なります。これを小さいことと思って怠ってしまうと、要らぬトラブルが起こってしまうこともあります。

誰しも、自分が生活している中で、激しい騒音が唐突に鳴り響いたり、通勤のための道路が通行止めになっていたりすれば、やはり人間の心理として腹が立ってしまうことは自然なことです。

せめて事前にお知らせをしておけば、「あの道が通れないなら明日は違う道で行こう」「今のうちに車を移動させておこう」といった心づもりできますし、「音が大きい時間帯は赤ちゃんを連れて買い物に出かけましょう」と思うこともできます。

もしお知らせがあったことを忘れていたとしても、「ああ、そういえば工事があるとポストに入ってたな」「男の人が礼儀正しくご迷惑かけますと挨拶に来ていた」と思い出していただけたら、騒音や通行止めに対する怒りのボルテージもある程度抑えられることでしょう。

人間には誰しも「縄張り意識」があります。自宅近辺であずかり知らぬことが行われると、権利を侵害されたように感じてしまうものなのです。きちんと通知や挨拶をして、許しを得ておけば、最低限は受け入れてもらえるはずです。

工事現場付近の要所となる家には挨拶にまわり、不在であったらチラシや手紙などで予定をお知らせしましょう。
挨拶に行く際は、どのぐらいの期間それが続くのか、音が一番大きく時期はいつか、といったこともきちんと伝えましょう。
地鎮祭の後は、ご挨拶に回る良いタイミングです。詳しくは「一般人には一生に一度の「地鎮祭」について、お施主様にきちんと説明できますか?」をご覧ください。

ここで反感をもたれてしまうようなことがあると、のちのちの工事は絶対にうまくいきません。ちょっとしたことで無用なトラブルの発生を防ぐことがあるので、手間を惜しまないようにしましょう。

役所や警察への正式な手続きを済ませる

小規模な工事では工事許可の必要ない場合もありますし、工事が短期間だからといって必要な道路使用許可などを取らない業者も中にはいます。
しかし、もし何か問題が起きたときに役所や警察への正式な届けをきちんと出していなければ、事態はとても複雑なものになってしまいます。
万一、クレームが発生してしまい、近隣の方となんらかの交渉を行わければならなくなったような場合、を済ませておくことは絶対に必要です。
明らかに違法なケースだと、下請けでも業務停止や罰金などが課されてしまうことがあり得ます。
後ろ暗いところがあると、トラブルが起こったときに、きちんとした説明ができなくなってしまいます。住宅メーカーとしての評判にも関わってきます。

経費が必要になったり、時間もとられてしまいますが、正式な手続きは必ず怠りなく済ませておきましょう。

こまめにコミュニケーションをとる

「ちゃんと一度お知らせしたから」「挨拶はすませてあるから」といった気持ちではなく、積極的にコミュニケーションをして問題の発生を予防し、もし問題が起こってしまった場合はすぐに解決するようにしましょう。

たとえ事前にお知らせをしていても、特に音が大きくなる期間や、不測の事態が発生した場合には、再度こまめにご近所をまわってお知らせすることが大切です。

近隣住人の方がたも、通知された内容を忘れてしまっていることもあります。やむをえず騒音を立てる重機を使う際には、最も迷惑を受けるであろう家に「何時間、何日間で終わる」などと説明にいくといった心配りが大切です。

現場では、鉄板が倒れてしまったり、まとめた金属パイプが崩れて騒音を立ててしまったり、という不測の事故が起こることがあります。

現場では「突発的で例外的な出来事」として注意を喚起して終わりかもしれませんが、近隣の方々にとっては、それで済む問題ではありません。今後もそうした騒音に悩まされる可能性があるのか、そもそも安全面の管理は大丈夫なのか、と大きな不安につながってしまうこともあります。いち早く謝罪などを行い、不安を解消してあげてください。

小さなことのように見えても、こうしたことが信頼関係にもつながってきます。

トラブルが起こらないように万全の対策をする

近隣住人の方々とのトラブルにつながりやすいのは、下記のようなケースです。

騒音や振動

なるべく振動を抑え、音を抑えた工法を工夫しましょう。もちろん防音パネルやシートなどの養生を忘れてもいけません。

また「時間帯」に気を使うことでクレームも少なくできます。

許可はちゃんととっているからと、早朝や夕刻の家庭団欒を楽しむ時間帯に工事を行うとトラブルにつながりかねません。

騒音関係は工事現場で最もクレームになりやすいものです。法律でも、騒音は85デジベル以下、振動は75デジベル以下と設定されています。この基準値を超えてしまうと裁判になることもあります。

お知らせしてあるから大丈夫だろうなどといった甘い考えで臨むことはしないでください。

埃、粉塵

粉塵は予想以上に飛び散りやすいものです。必ずでシートなどの養生や散水で防止しましょう。

解体工事では、アスベストの問題もあるので、特定の場所で管理して作業することが必要になります。

日中は、洗濯物を干したり、外で活動する人々が多い時間帯です。洗濯物や車・バイク・自転車、ベランダや玄関、庭先などを汚してしまうことがないように気をつかいましょう。

時には自分たちで防護シートの覆いをかけにいったり、車を汚したら代わりに洗車をしてあげるといった気に使い方が必要です。

また、道路を公共のものと思って汚してしまうと、見た目が悪いだけでなく、通行のさなかに飛散して衣服などを汚してしまうこともあります。水撒きなどを十分に行うことが大切です。

地盤

現場の最新の状態を把握して、間違いのない工事を心がけましょう。

古い図面などに頼って、問題を引き起こしてしまうケースもあります。誤った工事は地盤沈下を引き起こしたり、水道・ガス管などを破損してしまう可能性があります。現場に関する情報は常に最新のものにアップデートしておきましょう。

ゴミ、廃棄物

工事には、多くのゴミ、廃棄物が伴います。
産業廃棄物の不法投棄は、違法であるというだけでなく、有毒物質関係で大きな問題にもなりかねません。
大型ゴミや産業廃棄物だけでなく、そこで働く人々の生活ゴミもしっかり管理しないといけません。人数が多く、それが長期間続くようだとかなりの量になります。タバコや空き缶、食べ終わった弁当がら、菓子の包み紙といったゴミのポイ捨てなどが起こらないようにきちんと管理してください。

ゴミ処理業者の手続きなども含めて、現場にかかわる全員でゴミ管理をしっかり行いましょう。

不当な要求ははねつける

近隣の住人の方々に挨拶をする際に、菓子折などを配る会社もあるそうです。ちょっとしたお菓子ぐらいなら許容範囲かもしれませんが、金品や商品券といったものは、たとえクレームを受けた場合であっても、安易に配るべきではありません。

単純にクレームを入れると金品がもらえると思われたり、この会社は金品で解決する会社だと思われたり、ときには暴力団などの反社会的勢力を引き寄せてしまうことすらあり得ます。

近隣の器物を破損してしまった弁償といったことがあるなら賠償しなければなりませんが、安易に金品などを渡すようなことは、逆にトラブルを抱え込むことにもなります。一線を引いておくことが大切です。

まとめ ~現場監督として、現場全体で対策に取り組む姿勢をつくろう

今回ご紹介したことは、工事を滞りなく行おうとする姿勢と、そこで生活している人々への配慮、思いやりさえあれば、自然と実践できるものです。
近隣住人の方々と友好的な関係を保つことは、何も無理難題を受け入れたり、下手に出ることではありません。
突きつめれば、現場監督として良い仕事をすることが、何よりもトラブルを防いでくれると言えるでしょう。

下請けや職人、出入りの業者まで、現場にはあらゆる人間が出入りします。近隣住人に対する配慮は、現場監督だけがすればいいわけではなく、現場の人間全員で徹底しなければ意味がありません。
職人の中には、荒っぽかったり、口調がきつめの方も多くいます。ご近所に対する挨拶やマナーを含めて、朝礼や日ごろの指導などによってしっかり周知させましょう。
何か好ましくない行動があった場合は、必ず現場監督に報告が来るようにしておくことが必要です。
また、現場の入口はトラックの出入りがあるために警備員を頼むことがありますが、そうした部外者の行動がトラブルを引き起こすこともあります。ずっと携帯をいじってるとか、タバコを吸っている、通行人や子供を適切に誘導しないといったことが起こると、近隣住人の心情を阻害してしまいます。
仕事場全体で「隣近所に負担をかけずに工事をなしとげよう」という意識を広めることが大事です。