ファシリテーションに役立つ5つのメソッド

ファシリテーションに役立つ5つのメソッド

住宅コンサルタントの仕事は、黒子としてお施主さんの一生を決めるとも言える家づくりをサポートすることです。
住宅コンサルは、話し合いの場を有意義にするファシリテーター」という記事で、その仕事の力になる考え方として、「ファシリテーション」についてご紹介しました。
この「ファシリテーション」を確実に実践するには、いくつかのコツがあります。
これまで話し合いの場に出向くことが積極的でなかった人や、発言を控えていた人のモチベーションをどのようにして上げていくのか、ということにはいくつかのメソッドがあります。

今回はこれらのメソッドを、大きく「アイスブレイク」、「ブレインストーミング」、「ポジショニングマップ」、「バタフライテスト」、「ペイオフマトリクス」の5つに分け、それぞれの場面で気をつけるべきポイントをまとめてみました。

家づくりに際し、今後の生活を決める家族会議では、全員の納得が得られ進めていくことが大切です。家族の誰もが妥協しない話し合いができるよう、コンサルタントとして、しっかりとお施主さんを支えていきましょう。

ファシリテーションに役立つ5つのメソッド

まずは「アイスブレイク」で、リラックスできる環境を

ファシリテーションを実践するときに最初の難関となるのは、誰もが発言しやすい環境が整っているかどうかということです。
家族同士とは言え、相手を大切に思うあまりに気を遣いすぎてしまったりすることがあります。特に二世帯住宅を作ったりするような場合では、なおさらのことだと思います。

そんな時は、この「アイスブレイク」を使って、その場の目に見えない緊張を解きほぐしましょう。
企業での会議なら、雑談を交えて自己紹介をしたりしますが、家族同士ならいきなり雑談からスタートできますね。よりプライベートな話ができる点も強いです。今日は何があったのか、今日の夕食は何がいいか、どんなことでもいいので、家族が雑談できる話題を振ってみてください。

この時に注意するのは、家族全員に発言をしてもらうことです。この段階で発言をする人が偏ってしまうと、今後の過程にも影響が出てきます。日常の出来事は誰もが話せる内容なので、全員に話題を振ってください。

気軽な気持ちで何でも言おう!「ブレインストーミング」

アイスブレイクによってその場が和んだら、ついに本題に入ります。
自分の気持ちを言葉にするのは難しいことです。そんな時は“どんな意見も否定や評価をしない”「ブレインストーミング」の手法を使いましょう。
「ブレインストーミング」は、通称「ブレスト」とも言われる手法で、アイデア出しをする際に広く使われます。
人がなかなか自分の意見が言えない理由は、その意見が否定されないか、反対されないかという他の人からの評価を気にしているからです。この「評価」をしないというルールを設けることで、何でも言える環境を作ってしまえばいいのです。

「ブレインストーミング」を行う際に注意しなければならないのは、話し合いをする前に“人の意見に対してこの時点では評価しないように”ということを、メンバーに最初に伝えることです。「対面式キッチンにするのか」「書斎は作るのか」といった、いかにも意見が偏りそうな話題でも、まずは“聞く”ということに注力するよう参加者に伝えてください。

ただ、途中で話の軸がずれないようにすることは大切です。ファシリテーションの用語で「アジェンダ」と呼びますが、今、何に関して話し合っているのかということを紙に書いて見せるなど、視覚化して、方向性を見失わないサポートをしてくださいね。

もし煮詰まってしまったら、「ポジショニングマップ」で交通整理を

ブレインストーミングで多くの意見を出していっても、いつかは煮つまってしまうこともあるかもしれません。そんな壁に当たってしまったときは、「ポジショニングマップ」という手法を使ってみましょう。

「ポジショニングマップ」とは、言葉だけではゴールのイメージが湧かないような時に、絵を使って説明し、意識を共有することを言います。出てきたアイデアをただ箇条書きにするのでは、なかなか頭に入っていかないものですが、図解化することで理解しやすくするわけです。

もし話が詰まってしまったら、ホワイトボードや、ワープロで打った資料を渡すのではなく、これまでの意見をまとめた資料を、絵を交えたり、カラフルな色使いで作ってみましょう。

IT化が進んで、3Dの家の完成図を見せられるようになった今でも、設計士さんはあえて手書きの絵で完成図を見せることが多いようです。それはなぜかというと、こうしたアナログの方法の方が、想いが伝わりやすいからです。まだ契約を決めかねているようなお施主さんも、その絵を見ることで、自分がその中にいる世界を想像しやすくなり、契約に結びつくということも多いそうです。
画一的なプレゼン資料を見慣れてしまった時代にこそ、手書きという温かみのある方法も心に響くかもしれませんね。

結論を出す時は、「バタフライテスト」や「ペイオフマトリクス」が役立つ!

このようにして多くの意見を得ても、最終的には結論を出さなくてはいけません。
話し合いを上手に進めていれば、だいたいの方向性や意見は一致してくるものですが、それでもまだ結論が導き出せないようなときは、「バタフライテスト」や「ペイオフマトリクス」のメソッドが役立ちます。

「バタフライテスト」とは、簡単に言うと多数決です。
人数によって意見を決めるのはちょっと強引な気もしてしまうかもしれませんが、全員が平等に票を持ち、普段意見の強い人の考えに左右されないので、とても明確で納得がしやすい方法であると言えます。
上でも述べたように、キッチンや書斎に関する問題は、お施主さんの奥様や旦那様の意見が偏って反映されやすい話題であると言えますが、それを家族が冷静な目で見ることによって、「お父さんに任せよう」といった無難な結論に逃げることを防ぐことができます。
また、家族は、家族みんなが幸せになることが幸せなのですから、多数決によって導き出された結果ならば、納得もしやすいですよ。

ただし、このとき、できれば「賛成」「反対」などと白黒をはっきりさせて議論するのではなく、「いいと思う」「どちらでもいい」「賛成できない」といった“余白”を残しておくことも大切です。
最終的には家族が話し合って決めることが好ましいので、すべての結論を多数決に委ねることは危険です。賛成度を10段階評価にして、それぞれの気持ちを聞いてみてもいいかもしれませんね。

また、この結論を出すときに、「ペイオフマトリクス」という手法も使えます。
「ペイオフマトリクス」とは、意見の優劣を視覚化してより分かりやすくすることです。例えば、賛成や反対をする際に、その理由となる主な事項のひとつが「費用面」だったとします。その時は、上下に費用の高さ、左右に賛成・反対の軸を用い、自分の考えがどのあたりにあるのか示してもらい、それぞれの意見の基準を明確に捉えてみましょう。

まとめ

ここで紹介したメソッドは社内会議や関連会社との交渉の際にも使えます。全員が腹を割って話すことで、わだかまりなくスムーズに仕事を行うことができますよ。
ファシリテーションのコツを正確につかむまでは、何度も訓練することが大切です。
しかし、ファシリテーション自体は今すぐにでも取り入れることができるものです。
明日からでも仕事に取り入れ、お施主さんが笑顔になれる家づくりをしっかりとサポートしてあげてください。